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2016年12月 6日 (火)

1-2 虎ノ門の女

            虎ノ門の女

午後は雨になるという。昨日吹きまくった冷たい北風は嘘のよう。虎ノ門駅・地下の階段を出た路上には、湿り気のある生温かい風が吹いている。オフイスを出た女性たちは上着なしで行き交う。斜め前からの胸は小刻みに波打つ。斜め後ろからの腰は左右にたゆとう。先ほどから私はスターバックスのテラスの椅子から眺めている。光明はこの先の出版社に行く時には、必ずここで休むことにしている。


 残る余韻と前を行く女性たちが、昨夜の雪枝の姿を呼び戻す。雪枝が上着を脱いだ時、情事が終わりシャツを着た時、私はソファーから胸から腰に、腰から胸に視線を滑らせて眺めた。雪枝は「いやねー、むこう向いてて」と、上着を脱ぐときも、シャツを着る時も同じ言葉を返して後ろを向いた。その時、胸は揺れ、腰は左右にたゆとうた。


 「今夜は寒いけどね、光明さん、明日わね、暖かくなって、午後には久しぶりに雨が降るようよ。上着なしで街を歩けるかもね、光明さん、早くこっちへ来て・・・」ダブルベッドの布団の先から雪枝の声が漏れてきた。「僕は嬉しいよ。上着を脱いだ女性が街を歩いている姿が久々に見られるからね」と、笑いながら応えた。

雪枝は「今、私の上着を脱いだ姿を見たでしょう、あとでまた見せてあげるわね、しょうがない人ね」

 

2010.1.28 

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